喫煙者の受け皿をつくり、ポイ捨て・路上喫煙を防止。

環境・エネルギー

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バリアフリー構造のコンテナ型喫煙所

各自治体で路上喫煙禁止の条例の制定が進んでいるが、それを遵守させるのは難しいようだ。府中市では、条例違反者に対する過料徴収を開始すると同時に、路上喫煙に関する苦情が多かった2カ所に、コンテナ型の公衆喫煙所を新設した。

※下記はジチタイワークスVol.38（2025年6月発行）から抜粋し、記事は取材時のものです。
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“喫煙する権利”を守りながら、条例の実効性を高める方法を採用。

受動喫煙を防止するための施策を推進する自治体が増えている。同市も平成16年に「府中市まちの環境美化条例」を施行し、府中駅など市内5駅の周辺を喫煙禁止路線と定め、指導に力を入れてきた。しかし、条例違反者が後を絶たず、住民からの苦情も多かったという。

「特に府中駅前と、国の天然記念物にも指定されているけやき並木通りは歩行者数が多く、休日はイベントなども開催される場所です。路上喫煙禁止を徹底すべき場所として、以前から効果的な対策を検討していました」と、毛塚さんがこれまでの状況について語る。実効性のある対策として、違反者から過料を徴収している自治体も多いようだ。「そこで、当市も同様の施策について附属機関の環境美化推進委員会に諮問した結果、“過料徴収が喫煙者の排除とならないよう、受け皿となる公衆喫煙所が必要”との答申が示されました」。

他自治体の喫煙所を見学したところ、「ランドピア」が提供するコンテナ型を導入している自治体があったという。それを参考に「バリアフリー喫煙コンテナ」を、府中駅前とけやき並木通りに導入することにした。吸い殻のポイ捨てに関するクレームも多かったため、半開放型のパーテーションより閉鎖型のコンテナの方が、受動喫煙の抑止だけでなく、喫煙所周辺のポイ捨て防止効果も高いと判断した。

難しい条件をクリアしながら、道路上に喫煙所を新設できた。

けやき並木通りには、暫定的に使用可能な場所が市の保有地にあったため、設置候補地としたそうだ。ところが、平成29年に再開発事業が完了した府中駅前周辺は、土地利用区分が決まっており、喫煙所を新設できる余剰地がない。「そのため、当初から都市整備部と協力し、駅前ロータリー付近の歩道上で候補地選定を進めました」。

選定にあたっては、改札に近いこと、緊急車両の妨げにならないこと、喫煙所設置後も十分な幅員を確保できることなどの条件を一つずつクリア。再開発に伴いガス管などが随所に埋設されていたため、埋設物に影響を与えないことも重要な条件だった。

さらにコンテナを道路に設置する際は、建築確認関連の法的なハードルがある。「これに関しては、同社が建築審査会に提出する様々な資料を準備し、職員だけでは困難だった部分をサポートしてくれました。施工についても実績が豊富で、安心して任せられる存在でした」。このように、苦労はあったものの、無事に市内2カ所の喫煙コンテナが令和6年12月に開設された。

喫煙者への周知を図ることで吸い殻のポイ捨てが減少傾向に。

条例の実効性を高めるため、同市は喫煙所開設と同日から、違反者に対する2,000円の過料徴収を開始した。「喫煙所の場所を図示したポスターを制作し、周辺の飲食店などに店内掲示の協力を求めました。また、路上喫煙禁止の啓発チラシを巡回指導員に配ってもらい、喫煙者への周知を図っています」。指導員たちからは、“こうしたツールを活用した方が、相手も理解しやすく声もかけやすい”といった声が出ているそうだ。

「正確な集計ではありませんが、現時点では両喫煙所とも1日当たり500～1,000人ほどが利用しているようです。それに伴い、吸い殻のポイ捨ても減っているように感じます」。喫煙者・非喫煙者ともに快適に過ごせるまちづくりに向け、手応えを感じている同市。2カ所の喫煙所は、歩行者が多いエリアにあるが、喫煙所から漏れる臭いなどのクレームは寄せられていないという。「附属機関の答申をはじめ、周辺住民などからの意見を十分に聞いたことも、今回の施策のカギだといえるでしょう。これからも、まちの環境美化を推進していきます」と語ってくれた。